


Review
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七三分けテメェ!
へんてこ不気味な住宅地、みなさんも覗いてみてはどうでしょう?

『不動産屋さん自身はどこのどんな家に住んでいるのか?』
――この古典的な問いへの1つの答えが、この映画で描かれている。
この映画を、"ホラー"というひとつのジャンルに絞るのは忍びない。
トラウマのように1シーン1シーンが脳裏にこびりついて忘れられないような、最高に不気味な世界である。
実際にこんなこと起きたら…と考えると怖いなって思いつつ、話が進むにつれ、何かおかしいな?ちょっと変だな、って思ったことが早い段階で確信に変わる。
色味とか可愛いのに、どうしても不気味さが消えなかった。人口的に、誰かに作られたハリボテのような不自然な空間。毎日毎日同じ日常で抜け出そうとしても抜け出せない、いつ終わるのかも分からないモヤモヤとした状況が見てるこちらまでモヤモヤさせたような気がします。
最後まで不気味で最後までモヤモヤが残る映画でした。
得体も知れぬ気持ち悪さに常に駆られながらも、最初から最後まで楽しめる映画。家の中やシリアルのパッケージの可愛いビジュアルに反して、どろっとした何かを感じながら視聴するのはギャップがあってとても不思議な気持ちにさせられた。
見る人によって解釈は変わると思うけれどきっと共通するのは「漠然とした気持ち悪さ。」だたそれだけな気もします。
非現実的な狂った世界へ誘う今作は一見するとファンタジー映画のようにみえるが、観終わった後は"これは現実なのではないか..."と感じさせる強烈な余韻を残す一度観たら抜け出すことのできない迷宮サイコスリラー。
植え付けられた理想に狂わされる私たちも“ヨンダー”の住人なのかもしれない。
不動産屋に連れて行かれた奇妙な住宅地。
ミントグリーンの家もぷくぷくした雲も可愛いのに、なんだろう、この地獄は。
家の中だけでここまで不気味さを演出できるものかと、ロルカン・フィネガン監督の才能に驚きました。
最高だ。ファーストカットから存分に攻め立てる不穏、不条理、不幸。
深読みしてくださいと言わんばかりの匂わせキーワードの数々……
いいぞもっとやれ。
人前には決して出せない、黒々した嗜虐心が満たされてゆく――
未知の侵略者から攻撃されたりパラサイトされるわけでもなく、ただ“展示される”人間たちの人生を見るという世にも奇妙な映画体験。
しかもその果てしない悪夢のごとき世界観には、深い寓意がこめられているのだ。
画面に映る何もかもが気味悪い。
メルヘンな画が余計に心をざわつかせる。
「家にいるのに帰りたい」そんな気分を嫌というほど味わえるスリラーだ。